岐阜県にある「可児市文化創造センター アーラ」。「私たちは、文化芸術を触媒として、生きづらさを解消させる取り組みをしています」。館長の衞紀生さんからこの言葉を聞いたとき、思わず胸に込み上げるものがありました。アーラが取組む「社会包摂型劇場」について、概要からその広げ方についてお話しをうかがいます。
ご存知ですか。日本の、15~34歳の死因 1位は「自殺」。
10~14歳においても、1位の「悪性新生物」に続く2位となっていて、主要7カ国(G7)でこの結果は日本だけ。
今回の先生、可児市文化創造センター アーラ(以下、アーラ)の館長、衞紀生さんは、この現状を深刻に受け止めています。
「私たちは、文化芸術を触媒として、生きづらさを解消させる取り組みをしています」。衞さんからこの言葉を聞いたとき、思わず胸に込み上げるものがありました。
アーラは、地域に密着した公立文化施設として、たとえばこんな活動をしています。
障がいや国籍など越えて音楽を楽しむ「みんなのディスコ」。
国籍関わらずみんなで演劇をつくりあげる「多文化共生プロジェクト」。
寄付によって、諸問題を抱える子どもたちに鑑賞チケットをプレゼントする「私のあしながおじさんプロジェクト」。
地元の学校や福祉施設などへの出張ワークショップ。
アーラが目的とするのは、文化芸術によって【市民の心を癒すこと】ではありません。「私たちがやっていることは、文化芸術の機能を利用して、【承認欲求を充足してくれる他者と出会うこと】によって、前を向いて生きる力を得てもらうことなんです」
と、衞さんは言います。
このような社会包摂型の劇場経営は、全国から大きな注目を集め、視察も相次いでいるそうです。
しかし、「理想はわかった。でも、一体どうすれば、そんな場がつくれるの?」そんな声も聞こえてきそうです。
そこで今回の授業では、実際にいま、そんな場をつくろうとしている”先輩”の声を聞くべく、丸亀市役所 産業文化部 文化課 市民会館建設準備室長の村尾剛志さんとWebで繋ぎ、お話しをうかがう予定です。香川県丸亀市では衞さんを専門委員に迎えたこんなプロジェクトが動き出しました。
「新しい丸亀市民会館をみんなで語る車座集会」
文化芸術は、人が生きるために、心を保つために、想像力が殺されないためにとても重要なものだと思います。
だから、「劇場」の果たすべき役割はとても大きいのです。
いや、もしかすると、「劇場」と書くと少し距離を感じる人もいるかも知れません。
アーラに行ってみて感じたのは、「劇場」というより、「公園」であり、「図書館」であり、「たまり場」であり、…
アーラのパンフレットには、こう書かれていました。
「ここは『芸術の殿堂』ではなく、みんなの思い出が詰まった『人間の家』」。
この「生きづらさ」をどうしたら良いのか。私たちはどんな未来を見たいのか。「文化芸術」をキーワードに、みんなで一緒に考えてみませんか。