「層」をテーマに6種類の技法を考案し、その仕組みを用いて「像(絵)」を作り出す試みです。絵と現象の中間のような27作品を展示します。
「層像」ではこちらの6種類の技法を用いた制作物を展示します。
・レイヤードモーション
素材厚を利用した見る角度によって変化する絵
・シェード
乳白色のアクリル板を裏側から掘削し、有色の樹脂を流し込むことで浮かび上がる絵
・パイル
アクリル板の積層で構築した絵
・ディグ
積層したアクリル板を掘削することで生まれる絵
・リフレクション
アクリルブロックの上面を掘削・研磨することで、下面のグリッドを屈折させた絵
・モアレ
前面と背面の絵柄の重なりにより、視線の変化でモーションする絵
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昔から絵を描くのが苦手です。
描写自体は苦手ではないのですが、自由に描けばいいと言われると手が止まり、何かとっかかりはないかと探し続け、初めの線を描き出すのに随分と時間がかかります。
一本の線を描くことは、同時に他の全ての線の可能性を捨てるような気がして、潔癖気味だった自分にとって釈然としない行為でした。
デザイナーとして仕事をしていると、理論で構築できる部分を超えたところで、感性に基づいた判断が必要になることが多々あります。
今だに自分の感性と向き合う際は、疑い、身構えてしまいますが、正解が分からなくても全ての可能性を試せば、最良の選択肢(らしきもの)が見えてくることが経験から分かってきたこともあり、最近はそこまでの気後れはなくなってきました。
気持ちよく一本の線が引けた時も、その線が最良だと確信するために結局考えられる全ての線を引いてみます。
理論的に判断できるフェーズで選択肢できるだけ絞り、「程良い制約」をかけた後に片っ端から検証を行う、やや不恰好で非効率なやり方が自分には合っているようです。
本展示では「程良い制約」として「層」と「像」というテーマを設けました。
「層」から発想して、いくつかの「仕組み」を考案し、その仕組みの中で像(ビジュアル)を立ち上げました。
現象と絵の中間のような展示物は、結果的に普段平面と立体を横断しながら制作を続けている自分らしい表現になったと言えるかもしれません。
本展がご来場の皆様の想像のきっかけや、創造の刺激となることができましたら幸いです。