福島県葛尾村にてKatsurao AIRに参加したアーティストたちの活動を、震災からの復興における『帰還』をテーマに紹介します。
人間にとって”帰る場所”は民族のアイデンティティを形成する重要なものでもあります。それは時に、大きな戦争を引き起こすほどです。展覧会のタイトル「遠き山に日は落ちる」は、歌曲「家路」の歌詞から引用しています。その出自を辿っていくと、ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界より』にたどり着きます。”新世界”という言葉は、明るい世界のイメージと同時に、どこか暗いイメージも抱えています。我々の生きるこの世界には天災や人災、経済活動などに翻弄され、帰る場所を失った人々が存在しています。溢れるように情報が流れていく現代社会において、遠くに見える山に日が落ちる先に、住まう人々の顔を私たちは想像し得るでしょうか?
【Katsurao AIRとは】
Katsurao AIRは、福島県浜通り地区にある葛尾村にて実施するアーティスト・イン・レジデンス(AIR)プログラムです。アーティストやクリエイターが現地へ滞在し、ワークショップ、展示、トークなどの多様な交流プログラムを実施します。
本プログラムでは、国内外で活躍するアーティストやクリエイターが、一定期間現地へ滞在しながら活動や制作を行い、地域への滞在やリサーチ活動、制作物の発表等を行います。
目的には、原発被災地域での村内外の人々の交流による新たな地域コミュニティの構築と、芸術文化振興の一端を担うことにより、クリエイティブな経済活動が起こる起点の創出や、地域の魅力の発掘発信を行います。
【福島県葛尾村について】
2011年3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴う津波により、福島第一原子力発電所の事故による影響にて、葛尾村の全村民は村外に避難を余儀なくされました。2016年6月に帰還困難区域を除いて避難指示が解除され、2022年6月には特定復興再生拠点区域の避難指示が解除されました。
【Katsurao Collective】
現代アートが社会での実践を展開し、 アートと社会との接点が深まる現代において、 “アーティスト・コレクティブ ”※ の存在はますます重要になってきています。 コレクティブという枠組みは、 アート活動を個人主義的な創作活動の 枠から解き放ち、 より多様でフレキシプルな アートの形を社会へと提示します。 多様な価値観を持ちながら、創造性という価値でつながり一緒に活動を始める。 Katsurao Collectiveは、この地でそのようなコレクテイプとなることを目指すプロジェクト名であり、創造性という価値でつながる共同体の名前でもあります。
※共通の目標を達成するために活動するアーティストによって形成された集団