6月25日(木)からNIPPON VISION GALLEYで「SIWA|紙和」を特集しています。
先月、「SIWA|紙和」の現場を見学しに、山梨県市川大門の和紙メーカー「大直」を訪れました。「大直」のある市川大門は、千年の歴史ある和紙産地。「大直」のほど近くに穏やかな笛吹川(ふえふきがわ)が、また富士川、芦川と小さな町で3本の川が流れます。この土地は水源が豊富なため、歴史的に紙の産地として栄えてきました。現在、日本の40%のシェアを誇る障子紙が作られています。
障子紙や和紙製品を中心に製造するメーカー「大直」は、若い女性や男性、さらには海外での展開も見据えた上で、和紙の魅力を伝えるために、素材をいかしつつも、まったく新しい印象を付加できる商品開発を考えていました。
そんなとき、工業デザイナー深澤直人さんへのアプローチから「SIWA|紙和」シリーズが誕生しました。
深澤さんは当時、大直で作られているすべての紙を持ち帰り、その中から、主に商業用として作っていた破れない障子紙「ナオロン」を選び、商品開発したそうです。“しわになると取れない”というナオロンの性質を逆手に取り、素材を生かしたのだから驚いたと、大直でSIWAのプロデュースを担当している一瀬愛さんはいいます。
「SIWA|紙和」を作る縫製工房を一瀬さんが案内してくれました。
障子紙や和紙製品は分業で生産されるため、ここではすでにできあがったSIWAのもととなる、破れない障子紙
「ソフトナオロン」「RPFナオロン」を使い、レーザーカットや手作業で紙を裁断し、ミシンで縫製していきます。「ソフトナオロン」の原料は、パルプとポリオレフィン(化学繊維)。「RPFナオロン」の原料は、ペットボトル。リサイクルペットボトルを粉砕して繊維状にしています。
レーザーでミリ単位にカットした精巧な型紙を使い、機械や人の手で裁断・型抜きをしていきます。
平行に線を引けるかなどの下処理の精度が縫製のクオリティにつながります。縫いしろと“ポイント”がぴったりと合わなければいけません。扱っている素材は紙ですが、厚みがあるので、まるで革を裁断しているようにも見えます。
紙は布と違い伸縮性がないため、専用のミシンを用い、メンテナンスも自分たちで行います。
さらに驚いたことに、各工程でミシンも、担当する職人も異なること。ファスナーはファスナーの専門、ポケットはポケットの専門……。品質を安定させるために、それぞれの分野のミシンと職人がいるそうです。
縫製したバッグをひっくり返して表にします。元々はピンと貼ったシワのない紙(ナオロン)。
作業をしていくなかで、シワになり、風合いが出てくるそうです。
「図面で上がってきたもの+1で作るんだ」「現場が一番素材の特徴を知っている」そうお話しくださったのは、
縫製工房の長谷川透さん。
例えば、「小物入れ」の底は縫製されていません。糸がほつれたくないという理由から、
1枚紙を使って折り目の部分が底にくるようにしています。
ペンケースは、強度を上げるためにRPFナオロンを2枚使用します。
2枚重ねて折るのではなく、各パーツを山折りし、組み合わせます。
それぞれ輪になる方がペンケースの内底になり、縫い合わせます。手が切れないための工夫です。
これらは、元々図面になかったこと。
商品ひとつ一つ、私たちの気づかない部分に、使いやすく長持ちする工夫がほどこされていました。
「パーツの点数も少ないと生産性が上がる」と、いかにパーツを使わないで作成するか、工夫できるかを考えて
試して、深澤さんに提案するそうです。誇りを持って仕事をしている姿勢が、とてもかっこよく、楽しそうでした。
現場は、集中して作業に取り組み、緊張感に満ちていました。
1点1点すべて人間の手で縫い、形にしていきます。精巧なつくりにただ私たちは驚くばかり。
機械にはできない、紙との対話がありました。
これから約1ヶ月、d47 design travel storeでは、SIWAの特集を行います。
ぜひ店頭で手に触れて、細部まで行き届くつくり手の技をご覧ください。
これらが和紙製品なのかときっと驚くはずです。
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NIPPON VISION GALLERY 山梨「SIWA-和紙の継承と進化-」
2015年6月25日(木)〜2015年7月29日(水)
11:00〜20:00(最終日は17:00まで)
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d47 design travel store 澤田