9月8日、d design travel storeとd47食堂のメンバーで、日頃お世話になっている作り手さんを訪問しました。いくつかの班に分けて出発。わたしたちは静岡の「お茶のさすき園」さんの茶園と工場を見学させていただきました。
お茶の産地と聞いて思い浮かぶ地域としていくつかあると思いますが、今回はd47 design travel storeでもお取り扱いさせていただいている、静岡の「お茶のさすき園」さん。
創業は1887年。約120年の歴史があります。静岡での中でもお茶処で知られている牧之原台地の島田市に茶園と工場があり、茶の木から栽培しています。牧之原台地は大井川が運んできた土によってできた土地で、川から山の方へ土地が緩やかに傾斜していて、この川から登ってくる霧がお茶の栽培に適しているそうです。
あたり一面の茶畑は圧巻!
早速、茶畑を抜けて工場へ。「機械の仕組みがわかりやすいから」と、まずは規模が小さい工場へと連れて行ってくれました。
お茶の木から煎茶ができるまでの工程はおおまかに、「蒸す」「撚る」「揉む」「乾燥」「火入れ」です。
一番重要なのが「蒸す」工程。この蒸す工程で茎と葉が同じ蒸しあがりでないと、後で揉んだり乾燥させたりする時にちぎれてしまいます。
茎と葉は水分量も固さも違うので、同じ蒸し上がりになるように仕上げるのがとても難しいのだそうです。筒の回転スピードや諸々のタイミングを調整するのですが、それを見分けるのは「感覚」だそうで職人さんの技はすごいです。
つづいて、いつも動いている本工場の方へ。この日は工場が止まっているので静かでしたが、ほんのりお茶の香りがします。
これほど大きい機械を扱える職人さんは少ないそうで、機械を作っているメーカーさんもびっくりされるそうです。どこを見てもホコリひとつ無い清潔さにも驚きます。「よくここまで掃除できますね」とメーカーの方も視察に来られるほど。たしかに、ここまで大きい機械で茎と葉を均等に蒸し分ける職人さんはすごい!
この機械を扱う職人さんたちの経験や勘も大切ですが、おおつか茶園さんでは機械のほかにも土や天候も徹底的に観察・管理しています。
「水の比重は1です。その水と同じ比重に畑の土を保つことができれば、肥料が流れてしまったり逆に浮いてくることは無くなります。だから土の分析はしっかり行います。お茶の葉に虫が付く環境は決まっています。湿度と気温がある一定の数値になった時に発生します。その時にだけ効果的に薬を使います。正しく効果的に最小限つかう。わたしたちは農薬は良薬だと考えています」と大塚隆秀さんは話してくれました。
事務所へ帰って、試飲の始まり。沸かしたお湯を湯冷ましにいれて、勢いよく急須へ。不思議とお茶から栗のような甘くて香ばしい香りがします。部屋全体が幸せな香りに包まれてきました。
こつを教えてもらってわたしたちもお茶を淹れてみます。隆秀さんが淹れてくれたお茶と見比べてみると、水色が全然違う!そして飲んでみてその美味しさの違いに二度驚きました。美味しさが比べ物にならないほど違います。「自分が淹れたのが一番おいしいお茶です」とおっしゃっていましたが、なんども繰り返し淹れて隆秀さんのお茶に近づきたいものです。
日本のお茶の消費量は年々減っている傾向にあるようで、実際、急須でお茶を淹れているスタッフも多くはありません。
「静岡は子供の教科書1科目がお茶のおかげであると言っても、言い過ぎではありません。それほどまでに、静岡は産業としてお茶の恩恵を受けてきました。今ここで頑張らなければ。そして、飲むだけでこんなに幸せな気持ちになるお茶はとても素敵な文化だと思う。これを無くしては絶対にいけない。」と、隆秀さんの妹の大塚彩花さん。大きい製茶屋だからこそ、見えてくる消費量の減少のスケールも大きいのだと感じました。
そこでおおつか製茶さんが提案しているのがティーバッグのお茶です。お茶好きの私は最初「ティーバッグのお茶か~」と思っていましたが、「わたしたちはティーバッグのお茶は、削り節と同じ感覚だととらえています。今ではカツオを削る人が少ないように、急須でお茶を淹れる人も少なくなったことを受け止めるべき」との隆秀さんの言葉に納得。
とにかく飲んでもらわないことには始まりません。まずはディーバッグで「お茶を淹れる」「お茶を飲む」から「おいしいお菓子と一緒に楽しむ」「おいしいお茶を淹れたくなり急須で淹れるようになる」と、徐々に進んでいけばいいなと思います。
最近、コーヒーの勉強会を店内で実施したのですが、その際「コーヒーの味を決めるのは結局、豆の美味しさだ」と教わりました。お茶も一緒で「結局は茶葉」だそうです。お茶のさすき園さんでは栽培から製茶まで一貫してご自分達で管理されているので、とても信頼できると実感できたのが今回の見学の一番の収穫でした。
「静岡にお店があるからこそ、できることがあるはず」と、見学に同行してくれていた静岡店のスタッフからの嬉しい言葉。彼女は静岡出身ではないけれども、だからこそ自分にできることを見つけて、おおつか製茶さんとお茶のことについて考えていきたいと言ってくれました。d47 design travel storeでも、渋谷だからこそできることがあるはず。ティーバッグとともに、おおつかさんの気持ちも一緒に販売していきます。
とにかくおおつか製茶さんのお茶はおいしく、いつでも試飲できますのでお気軽に店頭スタッフにお声がけください。お茶の時間を一緒に楽しみましょう。
こちらは、d47の社員研修のなかで訪問させていただきました。
他にも、ワインやクラフトビール、自然農園などに分かれ、生産者見学をさせていただいています。
研修や見学の様子はこちらからご覧下さい。