4月5日から「修理と手入れ」をテーマに展覧会を開催します。
岩手県の出展者 田代淳さんの「漆継ぎ」作品
展覧会挨拶文から一部、、、
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第21回目となる今回は「修理と手入れ」をテーマに開催します。
私たちD&DEPARTMENTは、暮らしのなかで長く愛され、時が証明した本物の正しいデザインを「ロングライフデザイン」と呼び、紹介・販売してきました。形状や意匠だけでなく、つくられ方、売られ方と共に、修理やお手入れ方法なども含めた、ものを取り巻く環境が揃うことで、長くつくられ、使われ続ける「ロングライフデザイン」が生まれると考えています。また、大量生産・大量消費の時代も終わり、ものを買わない、持たない若い世代も増える今、修理や手入れをすることで長く使い続けられるという安心感が、ものを選ぶ際の大切な基準として、これから改めて重要視されると考え、本展を企画しました。
例えば、塗師(ぬし)が行う割れた陶磁器を漆で直す「漆継ぎ」や、その土地ならではの素材を原料にする「染め直し」の受付。また、刃物産地メーカーが取り組む包丁の「研ぎ直し」や、老舗石鹸メーカーの開発した「シミ取りキット」の販売など、各地の資源、技術、風土と関わりを持ち、私たちの暮らしに関わる修理方法やお手入れの道具を紹介します。
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今回は「修理できる商品」ではなく、「修理技術」や「お手入れ道具」にフォーカスする展覧会として企画しました。選定基準は大きく3つです。
1 その土地の資源、技術、風土と関連していること
2 私たちの暮らしに身近な修理方法やお手入れ道具であること
3 自らが関わる業界全体を考え、自社製品に限らず修理やお手入れに関する取り組みをしていること
例えば、座布団やクッションを選ぶ時の基準は色や肌触りなどが一般的ですが、メンテナンスがしやすい条件の一つは口の縫い方が「絎け(くけ)」と言って、ほどきやすくて、縫い目が表から見えない和裁の縫い方であること。コスト削減の為にミシンで一直線に縫われたものは、口をほどくだけでも大変な時間がかかるそう。しかも、そのような商品は中綿がポリエステル製のことが多く、綿製の中綿と異なりメンテナンス自体ができない場合も多いといいます。「修理、手入れができるかどうか」「修理しても使い続けたいと思うか」という視点で見えてくることは、もの選びの大切な基準になってきます。
選定の最終段階は現状の候補のイメージを貼り出して、足りていない要素と地域性をリンクさせながらのリサーチ。ここからが苦しい。。。
まだまだ続いている産地ブームのなかで、製品がつくられる環境や職人の作業風景など、美しい写真と言葉で表現するブランドが爆発的に増え、どれも思いのある商品に感じられます。だからこそ、「壊れたら直せますか?」「お手入れ方法を教えてもらえますか?」と聞かれて「もちろん」と言えられる商品かどうか。その安心感から生まれる関係性を「つくる、売る、使う」という、それぞれの立場から考える展覧会になればと思っています。
とはいえ、様々な理由で出展を断られることもあり、まだまだ交渉とリサーチの同時並行(汗)。 また、実際に出展者の皆さんと交流できるイベントも猛烈に準備中です!金継ぎの勉強会、まな板の削り直し、染め直しの受付、畳のメンテナンス方法、洗濯の勉強会などなど。そして、そもそも自分でお手入れしないとね!ということで、番外編で「ひとり問屋」日野明子さんのお手入れ勉強会なども開催予定。現地での関連ツアーなども企画中。お楽しみに!
d47 MUSEUM事務局のお仕事 番外編
福井県デザインセンターさんからアドバイザーの依頼をきっかけに、(わがままを言って)現地視察をさせてもらいました。アドバイザーとしての力不足を予めお伝えし、せめて勉強させてもらう為に現地へ。「何でもできる」という技術力の高い産地が故の「何でもあり」によって、自分たちの強みが絞り込めなくなる。「何もない」と悩む地域との大きな違いでした。
現地にお伺いして、きっとこれが強みだな、、、と考えるものの、この数回お会いするだけの関係では何もできないと、諦めのような気持ちになった時、福井のデザインチーム「TSUGI」の新山さんや、木地職人「ろくろ舎」の酒井さんを思い出しました。2人の周りにいる方々も含め、自分たちの強みを突き詰めることを「諦めない」ことが共通していました。自分に置き換えてみれば、自分たちの強みは何か、各地とのつながり方や東京ですべきこと、、、諦めず、腹をくくって取り組みます。簡単なことじゃないけど。
そんな「TSUGI」メンバーが中心になって開催している「RENEW」が今年も10月に開催されるそう。私もまたその時期に福井に行きます。もしもd47 MUSEUMの活動にも「TSUGI」や「RENEW」にも興味のある方は、現地集合解散で一緒に行きましょう。現地メンバーは忙しいと思うので、私が今回案内してもらったルートご紹介します!
そんな若い世代の挑戦をフワリと見守るデザインセンター藤田さん。2日間みっちり視察ありがとうございました。
色々な場所に行きましたが、急遽1日案内してくれた、ろくろ舎の酒井さんが「(こんな景色見られるの)ラッキーだね。」と言ってくれた、雪景色に夕暮れ前の陽の光がキラキラしている景色が一番の思い出。帰るのが寂しくなる素敵な景色でした。また行きます。(d47 MUSEUM 副館長 黒江美穂)
現在開催中展覧会「P to P GIFT 2018」はご好評つき2月12日(月祝)まで開催しています。
2月16日からは「d design travel EXHIBITION CHIBA」を開催します。d47 MUSEUMが「千葉県」一色で埋め尽くされ、編集部が2ヶ月間じっくり探してきた千葉県の「らしさ」を立体的に表現します。千葉と言えば、、、イメージ一新します!