名産の牡蠣を使った牡蠣ご飯や、伝統野菜、
東北独自の小麦食「はっと汁」などを盛り込んだ「仙台定食」。
その開発のため昨年末、d47食堂スタッフは宮城県を訪れました。
師走。
クリスマスのイルミネーションも灯り始める仙台市内から
広瀬川沿いの日辺地区へ。仙台伝統野菜「芭蕉菜」を探して
相原農場さんを訪れた。
相原農場では、代々農業を営まれているが
奥様の栄子さんが野菜作りのご担当。
仙台伝統野菜のほかにも、西洋野菜も育てる。
漬物に最適と言われた仙台芭蕉菜だが、白菜の人気におされ、
今では市場にも出回らないという。その貴重な仙台芭蕉菜を畑から
そのまま食べさせていただくと、甘みと独特の歯ざわり、そのおいしさに
寒くて丸まっていた背中が、驚いて伸びる。
相原さんの「野菜にあう土づくりが大変」と話す姿を追いながら
私たちは、ずんずん畑の中に入っていく。
仙台雪菜や、大根、蕪、人参。相原さんの育てる野菜はどれも
元気があって、色も美しい。
栽培をやめてしまえば、途絶えてしまうかもしれない伝統野菜。
栽培だけでなく、それを調理する人や
食べる人の意見も聞きたいから配達までするという相原さんの姿勢には
これまた背筋の伸びる思いだ。畑で野菜をかじり続ける料理長が
「この感動を、渋谷で、食堂で味わってもらいたい」とこの時、思ったかどうかは
定かではないが、相原農場を失礼する頃には、すっかり日は暮れていた。
翌日、仙台市内から車で約1時間。
「松島や ああ松島や 松島や」とうたわれる
日本三景のひとつ、松島に向かう。
ここでは、地元の農家の皆さんや高校生が連携して
伝統野菜「松島白菜」を育て、守ろうという活動が始まっているという。
やわらかく、甘い松島白菜も漬物にして最適とされていたが
そのやわらかさが流通に不向きで、生産量が激減した。
この白菜をつかった漬物を、漬物工房「味彩」の只木さんの
ご自宅の居間で、ごちそうになる。これがまた、おいしい。
「いつもテーブルの真ん中に漬物がある」と東北に親戚のある
食堂の仲間から聞いていたが、まさに感激の初体験だ。
お茶とのもてなしに、皆の会話が弾む。
「何も特別なことはしてないの、生姜を入れたり、季節の野菜で
彩りよくしてみたり工夫して。家の味です」と、
割烹着姿で、頬を染めて話す只木幸子さん。
ああ、全国にこういうお母さんがいて、日本の味、地元の味は
こうして守られるのだと実感する。
その松島では海へも食材を求めて。
宮城は、広島、岡山に並ぶ日本三大牡蠣名産地でもあり
松島湾の海岸周辺は種牡蠣の主産地。
海岸に近づくにつれ、何かが山積みになっていて「何だろう?」と
思っていたが、あとでこれは種牡蠣を海で成長させるための
帆立の貝殻であったことを知る。
伺ったのは「牡蠣を通して三陸を震災前よりも素晴らしいところにする」という
心意気のもと、牡蠣加工場「和がき」を営む阿部さんの仕事場。
朝、海からあがった牡蠣は塊になっていて
貝1個1個を切り離す人、貝殻から外して、むき身にする女性たち。
あたり前だが、私たちがよく目にする牡蠣になるまでにも
人の手が加わっている。
この新鮮で、ぷっくりとした立派に育った牡蠣。
そのまま生でも、おいしいのは言うまでもないが
「地元で食べられているという“牡蠣ご飯”にしよう」ということで
3日目は、その料理法を学びに、蔵王近く「ふるさとの味を伝えるお総菜店
ごっつぉうさん」のお母さんたちに会いにいく(以降〜後編〜に続きます)。
(d47食堂 内田幸映)