10月下旬、「山口号」「福岡号」「佐賀号」3冊のトラベル誌を持って、
d47食堂の日本酒担当は、「日本酒ぐるぐる」を行いました。
「山口に来て下さいよ。うちの店に角打ちしに来てください。」
食堂にたくさんの山口県のおいしい日本酒を紹介してくださる、
山口県「地酒のまえつる」店主・前鶴健蔵さんのこの一言から、私は今回の旅を計画しました。
「山口に行くのなら、足を伸ばして福岡と佐賀にも!」と、
今まで食堂に各地の美味しい日本酒を紹介してくれた、dマークの酒屋さんを巡る「日本酒ぐるぐる」を行うことに!
1日目は山口をぐるぐる!
この日は1日前鶴さんにお付き合いいただき、「まえつる号」で山口を回りました。
(前鶴さん、本当にありがとうございました!)
さっきまで、穏やかな青い海!白い砂浜!の海岸沿いを走っていたかと思うと、いつの間にか山深い景色へ変わっていました。
「山口は、なだらかな場所と山の場所とがあって、水が違うから、色んな味わいの酒が生まれるんでしょうねぇ」と、
前鶴さんから以前、伺っていましたが、車で半日走っていると、納得しました。
山口号 p.048 「BEAT CAFE」は、残念ながらお休みでしたが、お店の前の美しい海岸に驚きました。
山口号p.32 「カントリーキッチン」でカレーを食べ、
山口号p.044 「大屋窯」を訪ね、
そして、山口の地酒「東洋美人」の酒蔵へ!
「東洋美人」を造る澄川酒造場は、昨年7月の大雨で甚大な被害を受け、
一時は「しばらく酒が造れないのではないか…」とも言われていたそうです。
「本当に、あっと言う間に流されていったんです。急いで2階に避難したから家族は無事だったけれど、
蔵と酒は流されてしまって。」澄川社長の奥さまがお話しして下さいました。
1921年の創業から使われていた蔵は、1階部分に浸水し、「ほの暗い雰囲気だった」という
趣のある土壁も剥がれてしまいったそうです。
どうすればいいか途方に暮れたそうですが、その後、ボランティアスタッフと、全国の酒屋さんなど、
たくさんの方の支援を受け、蔵にたまった泥をかき、設備を整えて、年内にまた酒造りができるようになったそうです。
剥がれた土壁の代わりに、木材が貼られた蔵の壁には、支援しに来た全国の酒屋さんの応援メッセージが。
前鶴さんをはじめ、福岡の「とどろき酒店」さんのメッセージも見つけました。
真新しい板材の壁でしたが、その応援メッセージに澄川酒造場の築いてきた、人との繋がりや、歴史を感じました。
もうすぐ完成するという新しい蔵は、コンクリート3階建て。
次にもし、昨年と同じような災害が起きても、今度は大切な蔵や酒が流されないように、そんな強い想いを感じます。
浸水を免れた2階には、麹を作るという部屋が。
階段に足を踏み入れると、ギュウッという音がし、テカテカに光る床材から、蔵の歴史を感じ取れます。
重たそうな扉の中へ入ると、ひんやりとした蔵の中とは逆に暖かく、酒のような甘い香りがしました。
本格的な仕込みの時期になると、部屋の中は約40度。その中で酒米をかもし、麹を作るそうなのです。
「暑い中で作業して、クラクラしないんですか?」という初心者の質問にも「初めはしましたけどね〜(笑)」と
優しく答えてくださいました。
「ぜひ食べてみてください」と、麹をいただくことに。
遠慮しながらつまむと「もっとガバッと取っていいですよ。それじゃ味を感じませんから」と、この量!
食べてみると「…!」
最初は無味なのですが、噛んでいくと焼き栗のような甘みを感じます!おいしい!
来週に搾る予定だという新酒のタンクを覗かせて頂きました。
「長く呼吸をするとクラクラするので気をつけてくださいね〜」という言葉にちょっぴりドキドキしながら
上から覗くと、とたんに甘く華やかな香りが鼻の奥に入っていきます。
匂いで気持ちよく酔っぱらうことが出来そうでした(笑)。
再び立ち上がった澄川酒造場が作る、新しい「東洋美人」は「酒を届けられる喜びを胸に、
酒造りの原点に立ち戻り、今後とも精進していく」という杜氏の想いがつまった「原点」という名が付いています。
再び「東洋美人」を味わえる喜びは、そこはかとないものです。
個人的なお話ですが、私が生まれて初めておいしいと思った日本酒が、「東洋美人」でした。
自分の日本酒の「原点」は「東洋美人」なので、蔵元を訪ねられたことが、感慨深かったです。
東京に帰り、先日d47 design travel storeにて行われた「まえつる角打ちの会」で、
蔵で見学した搾り立ての新酒を、前鶴さんから一口いただきました。
あのときにタンクで嗅いだ香りをおちょこから感じたことが、なんだか嬉しくて笑ってしまいました。
昨年まで、番地シリーズ「611」の酒米を育てる田んぼだったという場所は、
水害の影響で雑草が生い茂る空き地になっていました。
そこは、前鶴さんが幼い頃遊んだという思い出の場所。
またこの場所育った酒米を使った「東洋美人」が呑める日を願いながら、澄川酒造場をあとにしました。
澄川酒造場のあとは、先々月にも食堂でお出ししていた「CAPIME coffee」さんへ向かいました。
山口号が発売された頃は、お店を持たず、出張でコーヒーを淹れていたそうですが、記事の反響もあり、
「珈琲豆御渡所“龜”」をオープンしたそう。
銅板の扉を開くと亀谷さんが!
素敵な雰囲気に前鶴さんと2人、ドギマギしながら、食堂のみんなに珈琲豆のお土産を購入。
帰ってからいただきましたが、素晴らしい珈琲タイムを過ごさせて頂きました。
亀谷さんご夫妻、ありがとうございました!
さー、このあとは「地酒のまえつる」に戻って、この度のメインイベント「角打ち」へ!
と、ここまで書いて、だいぶ長くなりましたね(笑)。
読んでいる皆さんが疲れないように(書いている私が熱中してクドくならないうちに、が本当の理由ですね、はい。笑)
続きは次回のお楽しみ。日本酒をチビチビと呑みながら、お待ちくださいね!
(d47食堂 菊地妙子)