9月に、山梨のワイナリー「丸藤葡萄酒工業」を訪ねました。
「日本のワイン」とは、どういうものか。
それを、徹底的に考え抜いて、
みんなが見て、触れて、味わえる形にして
差し出すことのできる人は、ごく僅かでしょう。
この問いに対する一つのヒントを示してくれる人物が、山梨にいます。
創業125年、「丸藤葡萄酒工業」社長の大村春夫さんです。
9月の長雨降りしきる中、
私たちは、「日本ワインの扉」を叩くような気持ちで、ワイナリーを訪れました。
中へ入ると、代々受け継がれてきた古い道具が
ワイナリーのいたるところで、今も現役として使われています。
その代表が、このホーロータンク。
今、ワインを熟成するためのタンクといえば「ステンレス」が主流ですが、
丸藤葡萄酒工業では、こまめなメンテナンスが必要であってもホーローを使い続けています。
そこには、金属がワインの味に与える影響を限りなくゼロにしたいという思いとともに、
道具を大切に手入れしながら使い続けるという、ものづくりの精神が息づいていました。
熟成されたワインは、瓶詰めされ、なんとすべて手作業でキャップを装着されます。
この日は、フラッグシップワインである「甲州シュール・リー」の出荷日。
手際よく、かつ大切に、箱に収められていきます。
静寂に包まれた奥のワイン貯蔵庫には、年代物のワインもありました。
「ワインは時間を味わうもの」だと語る大村さんの言葉に胸を打たれます。
貯蔵庫の脇からは、ちらりとワイン畑も望めます。
一つ一つ傘かけされ、収穫を待つぶどう達。
雨に濡れると病気にかかりやすくなるため、傘をかけて「レインカット」するのです。
降水量の多い日本では、よく取り入れられる方法ですが、
これまたすべて、手作業ということを考えると…なんて気の遠くなる作業なのでしょう。
醸造所内を一巡りしたあとは、
大村さんが造られたワインを、実際に飲みながら、さらにお話を伺います。
ヨーロッパから伝わったワインという文化に
今度は「日本のワイン」としての誇りを宿らせるために、
大村さんはいち早く、ワインのラベルを「日本語表記」にしました。
そして、かつて日本が「甘口ワインブーム」に沸き、
手間をかけず、手っ取り早く、甘みや旨みを添加する風潮が広がる中、
ただひたすらに、葡萄が持っている旨みを引き出す製法を守り続けてきたのです。
そうして生まれた丸藤葡萄酒のワイン「ルバイヤート」は、
志や理念だけでなく、味わいの面でも、いま、国内外で認められています。
大村さんは言います。
「山梨の人から葡萄を取り上げたら、みんなが路頭に迷うんだ。」と。
山梨の人たちは、葡萄とともに生きていることがひしひしと伝わってきます。
そして、日本のワインの歩みを、私たちも共に踏みしめていく方法に思いを巡らせます。
有り余る思いを受け止めた私たちにできることの一つは、
d47食堂で、丸藤葡萄酒工業の「ルバイヤートワイン」を味わっていただくこと。
10月は、白赤1種ずつ、どちらも日本固有品種の葡萄をつかったワインをご用意しました。
味わいは、言葉ではなく、食堂にて五感で感じ取っていただくとして、
このワインに魅せられた方は、ぜひ一度、山梨にも足を運んでみてくださいね。
丸藤葡萄酒工業
http://www.rubaiyat.jp
ワインツーリズムやまなし2015・秋
http://www.yamanashiwine.com
d47食堂 宮﨑 琴子