秋、長野の「ベアードビールブルワリーガーデン修善寺」を訪れた。
伊豆市を流れる狩野川のほとりに、
ベアードビールブルワリーガーデン修善寺がある。
私は、見学のなかで人生で初めて、生のホップというものを見た。
通常は、保管場所などの兼ね合いから、砕かれて使用されることがほとんどなのだそう。
しかし、ホップをそのままの形で使用することにより、
原料の持つ本来の香りを飛ばさずに、香り高いビールを生み出すことができるのだという。
原材料をできるだけ加工せず、素材の持ち味を最大限に引き出すことが、
ベアードビールの深いこだわりだ。
こうして造られたビールは、3階にある
20個ものタップ(=ビールサーバの注ぎ口)が立ち並ぶ
タップルームで味わうことができる。
ベアードビールの特徴は、ビールの名付け方にも現れている。
(いたって真剣な)遊び心が、あちこちに散りばめられているのだ。
「やばいやばい ストロングスコッチエール」や「黒船ポーター」など、
およそビールの名前とは思えないような個性的なことばが並ぶ。
どれも気になるものばかりで楽しく迷いつつ、やっとのことで3種を選んだ。
季節限定の「日本物語」は、
爽やかな香りの中に、しっかりと芯のあるボディを感じる。
さっぱりとした口当たりだが、物足りなさを感じさせない味わいだ。
醸造に長い時間を要することから名付けられた醸造家泣かせの「ブルワーの悪夢」は、
ビールだがグビグビいかず、じっくりと味わって飲みたくなる、ワインのようなビール。
最後の「フィッシュマーケットビター」は、ホップの味わいがガツンとくる。
素材の味が際立った、ベアードビールらしい味わいに仕上げてある。
個性的な名前を凌駕するような味わいの多様さ。
それぞれのビールにキャラクターを与えるベアードビールの技に、唸った。
ベアードビールのモットー「Celebrating Beer」は、
人生の様々な場面でビールを愉しむことで
その経験をより豊かなものにしてほしいという願いが込められている。
伊豆の大自然を眺めながらビールを味わう時間は、
まさに、「そのことを今、体験しているよ」と、思わせてくれた。
ベアードビール
http://bairdbeer.com/ja/
d47食堂 料理人 篠崎 由太