8/

06/d47 SHOKUDO

岐阜県を訪ねて〜岐阜定食の出来るまで〜

渋谷ヒカリエ8Fのd47食堂では、「d design travel」岐阜号の発刊に合わせ、「岐阜定食」を提供中。d47musiumでは、岐阜号を体感できる展示も行っています。

 

d47食堂では、「d design travel」岐阜号の発刊に合わせ、「岐阜定食」をお出ししています。

今回は、定食の開発で行ってきた取材の話とともに、岐阜定食について、お伝えしたいと思います。

 

岐阜の取材中、印象的だったのは、常に景色の中に、山や木々があったこと。

山を一つ越えると、雪が止んでいたり、風が強かったり、紅葉がものすごく綺麗だったり、山ごとに

天気や気温が変わっていきました。

定食に朴葉をお皿として使ったのは、そんな風景を感じていただきたかったからです。

実際に北部の飛騨地方では、朴葉をお皿として使っています。

朴葉の上に味噌と葱、きのこなどをのせて火にかけると、朴葉の香りが味噌に移り、味噌がとても美味しくなります。少し焦げたところがまた美味しいです。味噌だけでご飯が何杯でも食べられそうなほどです。

 

ほうば.jpg

 

朴葉の上に乗っているのは、「鶏ちゃん」と、「赤カブラ漬け」です。

「鶏ちゃん」は、鶏肉を味噌や醤油などで漬け込んで、キャベツなどと一緒に炒めたものです。

主に飛弾地方でよく食べられていて、味付けは各家庭で違い、味噌、醤油、塩、豆板醤を入れる家

などもあり、様々なようです。

 

鶏ちゃん.jpg

 

鮮やかな色の赤カブラ漬けは、高山のよしま農園さんのものです。

よしまさんは、家で使わなくなった木樽を一つ一つ譲り受けて、修理をしてもらい、木樽で漬けています。

木樽にはひびが入ってしまうため、一日水を張っておくとひびが埋まり、使えるようになるそうです。

樽の表面には膜が張っていて、この膜があることで、乾燥を防いでくれます。

「木の樽が職人さんだと思っています」と、語るよしまさん。

木樽で作ると、何も手を加えなくても木樽が美味しい漬物を作ってくれるのだそう。

ちょうど2月頃から食べられる状態になり、今、お出しているのは、とてもフレッシュな味です。

ここから、さらに漬けていくと、より深い味になっていきます。

 

漬物樽.jpg

 

漬物3.jpg

 

小鉢に盛っているのは、「煮たくもじ」です。高山では、冬が来る前に赤カブラや白菜を漬けておいて、

少しずつ食べながら冬を越し、春先になると酸っぱくなった古漬けの漬物を、一旦、塩抜きした後、

甘辛く煮て食べていました。昔は春になると、どの家からも煮たくもじを煮るにおいがしたそうです。

 

にたく.jpg

 

ごはんに、お付けしているのは、「ふな味噌」です。

瑞穂市の村木馨さん、成子さんのご自宅では、南部の美濃地方で食べられている郷土料理、「もろこ飯」「煮あえ」「金魚飯」「ふな味噌」などをご馳走になりました。

鮒味噌は、川魚があまり取れなくなる冬の時期の保存食として、焼いた鮒と大豆を赤味噌とザラメで炊いたもので、鍋をストーブの上に一日も二日も置いておいて作ります。「目黒」という黒い点のある大豆を使っていて、「目黒のほうがほっこりして美味しいのよ」と教えてくれました。

 

鮒味噌.jpg

 

根菜たっぷりの味噌汁には、ぜひ飛弾山椒をかけて食べてみてください。体が芯からよく温まります。

 

岐阜の白川郷では、10月にある「どぶろく祭り」で、その年に神社で仕込んだ「どぶろく」を振る舞います。今回、宿泊した白川郷の宿、「山本屋」では、今年振る舞われたどぶろくを飲むことができ、とろっとしていて酸味があり、いつまでも飲んでいたくなるくらい美味しかったです。

今回、食堂でお出ししているのは、下呂市の天領酒造さんのどぶろくです。酒米を飛騨ほまれにこだわっていて、とても丁寧に酒造りをされている酒蔵です。さらっとしていて飲みやすく、「鶏ちゃん」や「煮たくもじ」と良く合います。

 

どぶろくの器は、高山のガラス職人、安土草多さんのグラスです。

以前から食堂のガラスの小鉢を作っていただいていて、食堂スタッフでもファンがたくさんいます。

今回は工房で作っている所を間近で見させていただいたのですが、少し会話も交えながら、真剣に作っていく姿に感動しました。以前お会いした時に、「野に咲く草花を飾れるような、自然な器を作りたい」と話されていたのが印象的で、どこにあっても、自然の中に溶け込むような、自然を感じるような、素敵なグラスだなと思います。

 

岐阜の取材から帰ってきて、なにかこう、満たされている自分がいました。

どこか懐かしく、ほっとする岐阜の食、人々、風景に元気をもらいました。

定食を食べて、そんな気持ちになっていただけたら嬉しいです。

食堂でお待ちしています。

 

d47食堂 料理人 中山 小百合