アートが繋ぐ力を作品展示・ワークショップで体感する SHIBUYA WANDERING CRAFT 2024
2024年8月24日(土)から9月1日(日)まで「8/」で開催された『SHIBUYA WANDERING CRAFT 2024』。タイトルの「WANDERING」には、wonderful(驚き)と wandering(疑問)の2つの意味が込められており、2014 年からスタートしたこの企画は、「旅」「暮らしの再定義」「本」「渋谷」「DIY」など、さまざまなテーマに沿って企画されてきました。『SHIBUYA WANDERING CRAFT』期間中は、「Creative Space 8/」のフロア全体が共通のテーマに沿って、イベントやワークショップを開催し、渋谷らしい出会いと、新しい発見や繋がりを提供しています。
2024年のテーマは「繋ぐアートの力」。アートには、年齢、ジェンダー、障害のある人、ない人、全ての人々の垣根を超えて、心を動かす力があります。その力を信じて、固定概念に囚われず、技法もさまざまに、多様な作品と作家との出会いの場を生み出し、人々を繋ぐ活動を行っているアートプロジェクトや、作品などが展示されました。
こちらは、フロア中央部のイベントスペース「COURT」。
撮影:野口浩史/提供:アートフロントギャラリー
前方に展示されているのは、金氏徹平氏の代表的シリーズでもある「White Discharge-多様さを超えて-」シリーズ。白い樹脂を流しかけられたさまざまなフィギュアは、バラバラな個性を持ちつつも、まとまりのあるひとつのグループに見えるというもの。見覚えがあるキャラクターも、白い樹脂で隠されることで、別の見方で捉えられるのは、とても興味深いものでした。
見方が変わるとハザイも宝物に。
「アートの力」を体験するインスタレーション。
お隣のスペース「CUBE」でも、見方を変えることで新たな「気づき」や「面白さ」が発見できました。期間中現れたのが、本物さながらの回転寿司のカウンター。くるくる回るネタを近くで見ようと、来訪客が興味津々の様子で近づいています。そこに回っていたのは、工場などの製造過程で生み出される「ハザイ」を用いた「ハザイ寿司」です。
のれんの奥のスペースには、「フウトウマド」や「シジガミ」「マルゴム」など、さまざまなハザイが並んでいます。
参加者はシャリに見立てたスポンジの入った箱を購入し、ハザイと組み合わせることでオリジナルの「ハザイ寿司」を創作します。
こちらは、サンプルとして展示されていた「ハザイ寿司」。玉子、鉄火巻き、マグロ、ウナギ、いくら…?。捨てられるはずハギレや紙屑が「ハザイ寿司」として生まれ変わると、紙や木屑、ゴムだったものが本物の「寿司」のように見えてきます。
「ハザイ寿司」は創作するだけでなく、その寿司に名前をつけ、本物さながらの回転寿司レールに乗せることで作品が完成します。エビや玉子、いなり寿司など、「ハザイ」を組み合わせて既存の寿司ネタに見えるハザイ寿司もあれば、全くの新しい発想で、これまでにないオリジナルの寿司をつくりあげるパターンも。この日に参加した方の作品が回転レールをめぐり、その様子からインスピレーションを受けた新たな来訪客が、また新たな作品を創作する…という、とてもユニークなインスタレーションです。
この体験型インスタレーションを企画したのは、ハザイを用いたアートワークやインスタレーションを手がけるPalab(パラボ)の山野恭稔さん(左)と中里洋介(右)さん。「ぼくらが拠点を置く江東区清澄白河には、紙・鉄・木・ガラスなどを扱う多種多様な工場があって、江東区が『江東ブランド』を発足し、ものづくりを支えているのがユニークです。それら工場から譲り受けたハザイを用い、東東京エリアに昔から根付く『江戸前寿司』の文化と絡めて『ハザイ寿司』をつくるというのが今回の試みです」と山野さん。また、「ハザイ活用という言葉からは、ものを大切にするとか、無駄をなくすといった視点で捉わられがちですが、ハザイを活用して寿司のネタをつくるという視点で見ると、捨てられてしまうはずの端材も、どこか宝物のように見えてきます。そんな“楽しさ”を感じてほしい」とも話します。
また、「寿司」は、日本人だけでなく海外の方にも通じるテーマで、言葉の壁をも超えて楽しめるアートともいえます。参加者の方からは「こんなにも夢中になって創作をするのは久しぶり。無心になってものづくりができるのが楽しい」との声も。
ハザイから連想する自由な発想は、「端材=捨てられてしまうもの」という固定概念を「面白い」「美しい」「楽しい」といった別の見方に変化させます。国籍や年齢、性別など、さまざまな枠を超えアートの力を実感できました。
アートが繋ぐ力」を実感する展示や販売を
Creative Space 8/ 各所で展開
「d47食堂」では、サラダのようなデザートのような新感覚アイス「ヤサイの実アイス」が登場。アートの力で誰もが個性や創造性を活かせる場所をつくろうと設立された「SLOW GELATO」の野菜のアイスを使用しています。
「Creative Lounge MOV」が運営するショーケース「aiiima(アイーーーマ)」では、『kiji arita exhibition』が開催されていました。”kiji”(生地)とは、絵付けや釉薬などが施されるまえの素焼きのもののことを指します。『kiji arita』は、産地の倉庫に眠る戦後から現代までに製造された有田焼の生地に着目し、新たな光を当て循環させて行くことを目的としたブランドプロジェクトです。有田焼」と聞くと、赤や藍などで彩られた繊細で華やかな絵柄を思い浮かべますが、『kiji arita』では、製造された年代の違いによる形状の違いを楽しんでもらうため、表面を青緑、高台部分に白磁を残す、1つの配色のみで展開し、製品裏に形状がデザインされた年代とロゴを配しています。このほかにも、まだまだたくさんの企画と展示、そしてワークショップが開催されていました。
続く第二弾でも「SHIBUYA WANDERING CRAFT 2024」の様子をご紹介します。
⚫️information
SHIBUYA WANDERING CRAFT 2024
場所 渋谷ヒカリエ 8階 Creative Space 8/
会期 2024年8月24日(土) - 2024年9月1日(日)
時間 11:00-20:00