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REPORT

アートが繋ぐ力を作品展示・ワークショップで体感する SHIBUYA WANDERING CRAFT 2024②

2024年8月24日(土)から9月1日(日)まで「8/」で開催された『SHIBUYA WANDERING CRAFT 2024』。2024年は「繋ぐアートの力」というテーマのもと、「Creative Space 8/」の各ブースそれぞれが、アートの力を実感するイベントを開催し、渋谷らしい出会いと、新しい発見や繋がりを提供しました。

 

 

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All Artists きみがアーティストになる日!

 

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フロア中央部イベントスペース「COURT」では、あらゆる人のアート性をサポートする「世界ゆるアート協会」による、『All Artists きみがアーティストになる日!』が開催されていました。この日は「ペタペタ画」のワークショップの日。子どもから大人まで、夢中になってものづくりを楽しむ様子が垣間見られました。

 

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ワークショップで使用されていたカラフルな布シートは、貼って剥がせるクロス素材として開発されたものですが、柔らかく伸縮性があるため、どんな形状にも貼りやすく、一度貼っても何度でも剥がして貼り直しができるため、新しいアート素材として活用されています。このアートシールを使って、参加者みんなで大きな絵を作り上げていました。

 

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また、このシートを切り貼りしてオリジナルキャンドルライトをつくるワークショップも同時に開催。

 

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切って貼るという直感的な作業は、小さな子どもや障害のある人でも気軽にできるため、誰もがアーティストになりものづくりを楽しむことができます。「好きに切って好きに貼るっていう行為って、日常的な行為ではないかもしれませんが、アートは日常と違うルールでも、それ自体が自己表現のひとつとして認められる世界。アートには世界の常識を塗り替えていく力がある」と世界ゆるアート協会の澤田智洋さん。

 

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大小さまざまな葉っぱの隙間からのぞく、キャンドルの幻想的な光が印象的な作品は、小学生の女の子がつくったもの。「木漏れ日」というタイトルをつけた豊かな感性に、見る側の心も癒されました。

 

 

『BiG-i×Bunkamuraアートプロジェクト 第一回 受賞・入選作品展』

 

2023年より「Creative Space 8/」にて活動をしている「Bunkamura Gallery 8/」では、期間中、『BiG-i×Bunkamuraアートプロジェクト 第一回 受賞・入選作品展』が開催されました。このプロジェクトには、国内外から障害のある方が制作したアート作品1419点が、日本および国外11カ国から届き、受賞・入選した作品81点の作品がギャラリーを飾りました。

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この日会場では、本展覧会のアートディレクターでもあり、審査員のお一人である中津川浩章さんによるギャラリー・トークが開催され、ひとつひとつの作品をめぐりながら、作者の想いや、表現の力、障害があるが故に生まれた作品誕生までの背景など、解説されていました。

 

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こちらは、中村俊彦さんの作品で「武器」。刀や槍、弓矢など手のひらに収まるほどの小さな武器は、ヘアピンやアルミ、糸や端切れなどを用いて作られています。刀を納めるケースには、刺繍なども施され、実物をそのままミニチュアにしたかのような武器作品の数々に、息を飲みました。「好きなものに対する執着やこだわりは細部への工夫に表れていて、そしてそこにかける集中力は、障害があるから故のものなのかもしれません」と中津川さんは話します。

 

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こちらの作品は、コロナ禍に描かれたもので、「感染」(作:禄端 萌乃さん)というタイトルが付けられています。

 

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細やかな模様で構成された、噛み合わない歯車。世界中に繰り返しウィルスが広まった病をモチーフに、停滞した世界経済を描いています。キャンバスの中には独自の世界があり、何層にも見える歯車が、闇の中で動けずにいるような印象を受けました。

こうした気の遠くなるような“反復作業”による表現ですが、障害特性によっては、この“反復作業”によって、心の不安が落ち着くという方も多いようです。

 

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会場で目を惹かれたこの作品は、「お父さんと星空」(作:浅野 春香さん)。切り広げられた米袋のキャンバスに、細いポスカで描かれたものです。作者の浅野さんは、美術大学を卒業され、20歳で統合失調症を患い、その後は、入退院を繰り返しながら闘病を続け、アート制作活動を続けています。

 

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幅約1メートル、高さは160センチほどの大きな作品ですが、近寄って見ると、ひとつひとつが細胞のような模様で描かれていて、それらがいくつもの小さな顔を構成し、さらに引いて見ると大きな顔になっています。小さな顔がいくつも連なり、ひとつの大きな模様へとつながる様子は、珊瑚の産卵や、曼荼羅、宇宙などを思わせます。その制作期間はおよそ半年ほどにも及ぶそうです。

「気の遠くなるような細かな制作に、作者のエネルギーを感じると同時に、大好きなお父さんの病気を案ずる祈りにも似た想いを感じます」と中津川さん。「心を打つ良い作品の裏には、作者の抱える喪失感なども垣間見えます。人は誰しもがマイナスの感情を抱えながら、バランスをとって生きているわけですが、作者である彼女にとってのアート制作は、自分の心のバランスを図るひとつの手段なのかもしれません」とも付け加えます。

 

本展覧会では、制作に当てられる凄まじいほどの集中力、愛着から生まれた細部へのこだわり、豊かな色彩感覚、独自の世界観など、障害を抱える人の自己表現の豊かさに触れ、作者の心の奥底の声が聞こえてくるような圧倒的な力強さを実感するものとなりました。

 

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「Creative Space 8/」全体で「アートが繋ぐ力」を実感

 

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「Creative Space 8/」全体で、一つのテーマに沿い、さまざまな展示やワークショップを通じて「繋ぐアートの力」を実感できた9日間。

「d47 design travel store」では、86歳を超えてもなお、型彫り、糊つけ、染色までをすべてご自身で担う染色家・山内武志の作品が紹介されていました。期間中は、山内武志さんの師である芹沢銈介さんにまつわる話や、日々の制作にかける情熱の源についても伺うトークショーが開催されたほか、参加者が紋様を型紙に彫り、文庫本のカバーをつくるワークショップも開催されました。

 

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また、みんなで本を持ち寄り、みんなで運営する本屋「渋谷○○書店」では、100名を超える棚主による「ちがい(個性)」をテーマにした偏愛的選書を実施。自由な発想で制作されたZINEなど、ここでしか出会うことのできない本との出会いを楽しむ場となりました。

 

「SHIBUYA WANDERING CRAFT」は、また来年の実施も予定されています。

新しい価値観、学びを得て、日々の暮らしに彩りを与えるヒントや、多様性から生まれる感動に出会える場として「Creative Space 8/」にぜひ足をお運びください。

 

⚫️information

 

SHIBUYA WANDERING CRAFT 2024

 

場所 渋谷ヒカリエ 8階 Creative Space 8/
 
会期 2024年8月24日(土) - 2024年9月1日(日)
 
時間 11:00-20:00

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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