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REPORT

©️NPO法人ピープルデザイン研究所

インクルーシブな社会に向け 共に学び、共に遊びながら考える福祉 超福祉の学校@SHIBUYA 2024

2024年10月24日(木)から29日(火)の5日間、障害の有無にかかわらず、共に学び生きる共生社会の実現を目指すイベント『超福祉の学校@SHIBUYA』が開催されました。このイベントは、障がい者をはじめとするマイノリティや福祉に対する「心のバリア」を取り除こうと、2014年から2020年まで7回にわたり渋谷ヒカリエを中心に毎年開催されてきた『超福祉展(正式名称:2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展)』から発展した学びの場です。

障がい者福祉や教育関係者などに限らず、誰でもが障がい者の生涯学習やインクルーシブ教育などに関する最新の事例を知り、体験し、学ぶことのできるイベントです。

 

超福祉の学校2024 渋谷ヒカリエ8/CUBE会場の様子

 

これまで「福祉」ということばからは、障がい=マイナスなイメージとして捉えられがちでしたが、『超福祉』では、障がいなどのマイノリティを抱えている人も、健常者も全て同じで、混ざり合うことが当たり前であると捉えています。そして、ハンディキャップを抱える障がい者が、「カッコいい」「やばい」「カワイイ」と憧れられる未来を目指しています。

 

超福祉の学校2024 渋谷ヒカリエ8/COURTトーク会場の様子

 

COURTでは、遊具で非認知能力の発達を支援する幼児教育について、また、家庭や学校、地域でできるインクルーシブな学び、さらに音楽、図書、総合学習など、さまざまな観点からダイバーシティ&インクルージョンな社会の実現について最新の事例や、世界各地での取り組み事例など、ゲストを迎えて学びをアップデートするシンポジウムが開催され、オンラインやアーカイブでも配信されました。

 

また、CUBEでは3つのスペースをそれぞれエリアに分け、障がいがあるなしに関わらず、誰しもが楽しめる室内型公園・図書館・ミュージアムが混在する室内型インクルーシブ公共空間「超福祉の図書館」が登場。週末ということもあり、福祉や教育関係に従事されている方はもちろん、小さなお子さま連れのファミリーなど、多くの一般の方で賑わっていました。

 

超福祉の学校2024 渋谷ヒカリエ8/CUBE インクルーシブ遊具ブランコ

 

1つ目のスペースは「室内型インクルーシブ公園」。会場には、大きなアーチ型の支柱に、チェーンとロープで座面がぶら下げられた、スイング型遊具がありました。この遊具の特徴は、小さなお子さんから、肢体に障がいを抱えている人など、誰もが自由に遊ぶことができるということ。座位が取れない子、医療機器をつけている子どもでも、寝そべってブランコの動きを楽むことができます。マイノリティのある、なしに関わらず、数名が同時にこの遊具で遊ぶことで、同じ時を共有し、コミュニケーションが図れるインクルーシブ遊具です。

 

超福祉の学校2024 渋谷ヒカリエ8/CUBE インクルーシブ図書館

©️NPO法人ピープルデザイン研究所

 

2つ目のスペースは、見て、聞いて、触って楽しめるアクセシブルな図書を広める「りんごプロジェクト」による「インククルーシブ図書館。たくさんの本を自由に手に取り読むことができるエリアです。

 

超福祉の学校2024 渋谷ヒカリエ8/CUBE 絵本

 

超福祉の学校2024 渋谷ヒカリエ8/CUBE 点字の絵本

 

『さわってたのしいレリーフブック さかな』を開けてみると、点字だけでなく、さまざまな魚の形や鱗の模様までもが凹凸で表現されています。

 

超福祉の学校2024 渋谷ヒカリエ8/CUBE LLブック

 

こちらは、「働く」をテーマにした「LLブック」という本です。文字や写真だけでは理解することが難しい人のために、描かれている内容のポイントがアイコンで記されています。活字を目で見ることだけに捉われず、手の触感や、音で楽しむなど、さまざまな方法で誰もが読書を楽しみ、学べるようにと配慮された書籍。こうしたアクセシブルな図書を集めた「りんごの棚」と呼ばれる図書スペースが、学校や公共施設に少しずつ広がっているようです。

 

超福祉の学校2024 渋谷ヒカリエ8/CUBE 聴覚遮断体験

 

3つ目のスペースは、テクノロジーや楽器を体験できる「ミュージアム」エリア。聴覚障がい者の日常を疑似体験できるダイバーシティコンテンツでは、聴覚が遮断された状態をつくり、聴覚障害者の日常を擬似体験しながら、クイズ形式で指文字を覚えます。また、聴覚障害者は「話す」ことにもハンディを抱えている方も多く、音声認識を活用することができません。そこで、音声の代わりに指の動きを認識するAI制御のスマートスイッチを搭載したライトを用い、指文字で点灯や消灯を指示できる最新技術を体験しました。

 

超福祉の学校2024 渋谷ヒカリエ8/CUBE 指さしコミュニケーションパンフレット

 

こちらは、視覚障害者や外国人など、声でのコミュニケーションが難しいかたのための「指差しコミュニケーションパンフレット」。

「はい/いいえ」「◯◯がしたい」などの基本的なことばのほか、施設やサービスについて指差しで尋ね、気軽なコミュニケーションを実現できるコミュニケーションツールです。

 

超福祉の学校2024 渋谷ヒカリエ8/CUBE 会場案内タブレット

 

 

超福祉の学校2024 渋谷ヒカリエ8/CUBE シブヤフォント

 

また、会場内のさまざまな場所に「NFCタグ」と呼ばれるシールが貼られていて、情報を携帯で読み込む工夫がなされていました。NFCタグはQRコードと違い、書き換えが可能なことと、スマートフォンで読み込むことで、あらかじめ指定されたwebサイトの表示や、アプリの起動、音声ガイダンス、道案内など、さまざまな動作をさせることが可能。タグを活用して、見えない・見にくい人に向けた人へ音声ガイダンスなどで案内するなど、日常での活用法なども紹介されていました。

 

超福祉の学校2024 渋谷ヒカリエ8/CUBE会場 代表理事田中真宏

 

2020年に向けた『超福祉展』が開催された2014年から、10年。「福祉」や「障がい者」に対して、社会的な意識にどのような変化があったか、イベント主催のNPOピープルデザイン研究所の代表理事・田中真宏さんに話を伺いました。

 

「『超福祉展』開催当初の2014年から比べると、ダイバーシティやインクルーシブといった言葉も広がり、「福祉」や「障がい」に対する理解やイメージも変わってきていると思います。例えば、アイマスクを着用し視覚を遮断した状態でプレーする「ブラインドサッカー」などのパラスポーツは、10年前は”障がいのある人のスポーツ”として健常者のスポーツとは分けられていたものが、東京パラリンピックを契機にさらに注目を浴び、テレビなどのニュースでも“スポーツ枠” の中で、国内外のサッカーと並列で当たり前に報道されるようになりました。さらに、テレビやラジオなどのマスメディアや広告でも、健常者と共に、障がい者も普通に出演するシーンも少しずつ見られるようになり、日常の中に「福祉」 や「障がい」が自然に混ざりあってきて、人々の意識にも変化が起きていることが伺えます。また、テクノロジーの進歩で身近に便利なツールも増え、福祉の分野に興味を持つ企業も増えてきています。

 

超福祉の学校2024 渋谷ヒカリエ8/CUBE会場の様子

©️NPO法人ピープルデザイン研究所

 

そして「幼少期から障がいのある人と、健常者が触れ合う機会を作ることも大切」であるとも話します。健常者も障がい者も共に快適に過ごせるインクルーシブな社会をつくるためには、「幼少期や義務教育の中で障がいのある人と共に過ごし、障がいとは一体何か、障がいは人にあるのではなく“社会”にあることを知ることが大事。そしてこのイベントでは渋谷のど真ん中の商業施設の中の、クリティブな空間から、従来の福祉ではない『超福祉』を発信し、それに共鳴して自らアクションを起こす人を1人でも増やしていきたい」と田中さん。

 

渋谷という多様な人が集う街で「障がい」や「福祉」という言葉を意識せず、誰もが当たり前に混ざり合い、、誰もが楽しみながら集える場を設けること。そして、その場を運営する人の存在。「超福祉」な世界の縮図が垣間見られたイベントとなりました。

 

⚫︎ INFORMATION

超福祉の学校@SHIBUYA 2024
飛び越えて学ぼう。学んでつながろう。

開催期間 2024年10月24日(木) - 2024年10月29日(火)

開催時間 11:00-20:00 ※最終日29日(火)は18:00で終了

開催場所 渋谷ヒカリエ 8F 8/ CUBE 1,2,3


<シンポジウム>

日 程 2024年10月25日(金)~27日(日)

時 間 11:00-20:30 ※最終日27日(日)は 18:30で終了

場 所 渋谷ヒカリエ8F 8/ COURT

主 催   NPO法人ピープルデザイン研究所

 

<オンライン配信>

シンポジウムはライブ配信、アーカイブ配信を行いますので、以下よりオンラインでご視聴可能です。

公式ホームページはこちらから_公式YOUTUBEチャンネルはこちらから

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